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技術セミナー Oリング・オイルシール技術講座 第1回「Oリング設計選定」

2020年11月19日

Oリング・オイルシール技術講座 第1回

Oリング・オイルシール技術講座 第1回「Oリング設計・選定編」

Oリング・オイルシール技術講座、第1回は「Oリング設計選定」という題目でお送りいたします。講師は株式会社サカエ、SSE課の粟倉が担当いたします。今回の講義はOリングを設計、選定するにあたり、覚えておくべき基礎的な内容を解説した技術講座です。Oリングの特徴・シールメカニズムや、設計・材料選定について説明しております。Oリングを初めて使うお客様には必見の講座となっております。是非ご視聴ください。

【講義のアジェンダ】

1.Oリングとは

 1-1.Oリングの特徴と分類

 1-2.シールメカニズムと求められる特性

2.取付溝の設計

 2-1.シール性を確保する圧縮率

 2-2.溝設計の推奨値

3.材料選定

 3-1.シール対象物と温度によるゴム材料選定

 3-2.スキマとゴム硬度の関係

4.質疑応答

 


【本セミナーの文字起こし】

▶講師自己紹介

私は営業部のSSE課というところに所属しています。SSEとは、サカエシールエンジニアの頭文字を取って課の名前として付けさせていただきました。Oリングやオイルシール等のシール製品を主に、潤滑剤、ベルト、防振ゴム等、ゴム製品、樹脂製品を取り扱いさせていただいております。本日のセミナーのシール関係以外にも、何かお困りのことがありましたらご相談いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

▶1.Oリングとは ⑴Oリングの特徴

早速ですが、Oリングの特徴をご説明させていただきます。Oリングは様々な機械に採用されているシールです。実績として、圧力60MPaの所で使用したことがあります。用途に合わせて多くの材料や寸法から選ぶことができる、最も汎用的なシールと言えます。

▶1.Oリングとは ⑵密封装置の分類

Oリングの密封装置としての分類ですが、Oリングは接触型シールの中のセルフシールに分類されています。
接触型シールはセルフシール以外にも、オイルシールやメカニカルシール等が分類されています。さらにセルフシールの中で、スクイーズタイプとリップタイプという分類があります。スクイーズタイプは、圧縮して使用するシールの中に分類されています。

▶1.Oリングとは ⑶Oリングのシールメカニズム

実際に圧縮して使うOリングのシールメカニズムについて説明させていただきます。
Oリングを溝に装着し圧縮することで、ゴムの復元力により反発力が発生します。この反発力が、Oリングと溝の接触面に面圧を発生させ、シール対象物・流体をシールするメカニズムとなっています。スライド中央の絵が、面圧が発生しているときのイメージの絵になります。こちらの絵の中で、接触幅と呼ばれているところにOリングの復元力によって面圧が発生し、シール対象物をシールしています。また、シール対象物に圧力が加わっている時にはもともと発生している面圧に対して、シール対象物に加わっている圧力がさらに追加されることで面圧がより大きくなり、シール対象物に圧力がある場合でもシールすることが可能になります。

▶1.Oリングとは ⑷Oリングに求められる特性

Oリングのシール性と寿命に関して、Oリングに求められる特性は

・低圧縮永久歪
・耐液性
・耐候性
・耐熱性・耐寒性
・耐摩耗性
・耐圧性
・装着性

の7つになります。
こちらの特性は一定期間シール性を確保するために必要になりますので、Oリングの選定の際には必要な特性です。低圧縮永久歪、装着性については溝の設計にかかわる特性です。その他の5つ、耐液性・耐候性・耐熱性・耐寒性・耐摩耗性・耐圧性については、ゴム材料の選定にかかわる特性になります。Oリングについて、簡単ですが特徴等触れさせていただきました。

▶2.取付溝の設計 ⑴寸法設計

ここからはOリングの取付溝の設計についての内容になります。取付溝の設計に関しましては、つぶし代、圧縮率、充填率、内径伸張率を検討することになります。

・つぶし代、圧縮率の目的:シールの反発力、面圧を確保するための項目
・充填率の目的:Oリング溝の中で、Oリングがどのように収まっているかの状態を確認するための項目
・内径伸張率の目的:ピストンシールとして使う場合のたるみ防止の確認

▶2.取付溝の設計 ⑵シール性確保の考え方

続いては、シール性確保の考え方についてです。Oリングは溝に装着し、圧縮して使用します。この圧縮する分の寸法のことをつぶし代と言います。圧縮された状態のOリングは、時間の経過とともに劣化により復元力を失っていくことになります。へたり代を初期のつぶし代で割った値のものを圧縮永久歪と呼び、CS(%)で表しております。CSが100%になったときに、初期つぶし代が全くなくなったという状態になり、シール性が全くない状態になります。ですが、この点についてはシール性を確保するという意味では、CS80%くらいでOリングの寿命と考えるのが良いかと思います。それでは、シール寿命を長くするために初期のつぶし代を大きくすれば良いか、というような考え方になりがちですが、次のスライドでつぶし代、圧縮率の狙いについて説明をさせていただきます。

▶2.取付溝の設計 ⑶圧縮率の狙い

こちらのスライドにあるグラフは、縦軸が圧縮永久歪、横軸に圧縮率を取っております。
先ほど申しました、つぶし代を大きく取るということはより大きな圧縮率でOリングを潰すことになりますが、ゴムの種類によって多少の違いはありますが、圧縮率が40%を超えると「圧縮割れ」という症状が発生しますので、Oリングが割れてしまい、シール性がなくなってしまうため、過度な圧縮は避けていただくことをお願いします。合わせて密封性を確保するためには、圧縮率は8%以上が望ましいと思います。また、圧縮率の上限ですが、こちらはOリングを取り付けるときの装着性、組み付け性に関係します。あまり圧縮率が高いと組み付け性が悪くなることから圧縮率は30%を上限としていただければと思います。密封性の下限値の8%ですが、パーセンテージではなく、シール性を確保するためにつぶし代として0.1mmのつぶし代を確保していただくことをおすすめします。

以上の話をまとめますと、圧縮率の狙いとしてはおおよそ8~30%で設定していただくことが良いかと思います。さらにポイントとしては、ゴムの耐久性、圧縮永久歪のへたりを考慮すると、おおよそ18~30%くらいの圧縮率が最も良い圧縮率だと思いますので、こちらをご参考に、圧縮率の設計をお願いいたします。

▶2.取付溝の設計 ⑷溝寸法設計の狙い値

圧縮率以外の溝の設計寸法の値についての説明です。先ほど、内径伸張率というのが設計の項目の中にありました。これは、円筒面(固定)として使うときの内外周の寸法設定をするときの呼び方になります。用途によって呼び方が変わりますが、意味合いとしてはOリングをどれくらい伸ばして使うかというところになります。

まず、円筒面のピストンシールから説明をさせていただきます。内径伸張率、軸に取り付けたときにOリングをどれくらい伸ばすかというところですが、0~5%に抑えていただければと思います。また、NBRは耐オゾン性を考えて0~3%くらいの内径伸張率にしていただくことをおすすめします。

円筒面のロッドシールですが、ハウジングに取り付けたOリングを、ロッドを挿入することで、ハウジングへ設けたOリング溝の外周面(側面)に対して押し広げていくようなイメージになります。その広がりがOリングの外径で3%くらいまでの張りにしていただきたいという内容になっております。左側の平面固定用では、内圧シール・外圧シールともに考え方は同じで非加圧側の壁側に接するように、それぞれOリングの外径ですとか、Oリングの内径の寸法と合わせた寸法の壁の設計をお願いします。

こちらのスライドでは、圧縮率について先ほど申しました平面固定用の8~30%となっていますが、円筒面の固定用では、圧縮率が8~25%と記載されております。円筒面で使われる場合に、圧縮率が高いとピストン・ロッドシールともに、取付時に過度な力が必要となりますので、可能であれば圧縮率の上限は25%くらいまでに抑えていただくと装着性が良くなると思います。最後に充填率についてです。中央値で75%を狙っていただいてMaxで90%以下の充填率に抑えていただきたいと思います。

以上がOリング溝を寸法設計する際の狙い値ですが、ここで1つポイントがあります。溝寸法、Oリングの線形寸法ともに公差というものがあります。溝設計に関しましては、それぞれの寸法の公差を考慮した値で改めて検討が必要になります。溝の最大寸法とOリングの線形の最小寸法のもの、溝の最小寸法のものとOリングの線形の最大寸法のものとそれぞれ比較しまして、この値の中に入るかどうかの確認・ご検討を合わせてしていただくことが必要となりますので、よろしくお願いいたします。

▶2.取付溝の設計 ⑸溝部の表面粗さ

溝部の面粗度についても管理が必要になります。
溝の各部分、用途や圧力・使用方法によって数値は異なりますが、面粗度はOリングのシール性確保、寿命に影響を与えるため、表の数値を参考に面粗度の管理をお願いいたします。以上が取付溝の設計についての内容となります。

▶3.材料選定 ⑴材料選定項目

材料選定では、使用条件を確認することでゴム材料の耐性を確認していきます。

・シール対象物を確認することで耐性のあるゴム材料を選定します。
・使用温度を確認し、ゴム材料の耐熱性・耐寒性を確認します。
・圧力と溝スキマを確認することで、ゴム材料の硬度を選定することになります。

手順として、各条件を確認していただいて、カタログの材料一覧より耐性のある材料を選定するような手順となります。

▶3.材料選定 ⑵材料選定 選定基準:シール対象物

ゴム材料とシール対象物との相性についての説明です。ゴムの種類によってシールできる対象物は異なります。こちらの表はゴム材料とシール対象物の相性を表している表になります。シール対象物は、水、アルコール、鉱油系のオイル、ガソリン等ありますが、それぞれのゴム材料によってシールできるできないというものが存在します。これを踏まえてシール対象物の耐性を確認するようにお願いします。

実際にシール対象物とゴム材料の相性が悪い場合、耐性がない場合の組み合わせの時には、こちらのスライドにあるようにOリングが適正なシール状態から、膨潤といって、ゴムが膨らんでしまったり、収縮といって線形が細くなってしまったりするような症状が発生します。Oリングが膨潤すると、取付溝からスキマへはみ出すような形になり傷が発生し、収縮、線形が細くなることでつぶし代がなくなってしまい、シール性が確保できず、シール対象物の漏れが発生することになります。シール対象物とゴム材料との相性を確認することが、ゴム材料選定の中の重要な項目となります。

▶ゴム材料の相性比較

こちらはゴム材料の相性比較をした参考資料になります。中央が試験前のエチレンプロピレンゴムのOリングになります。左側は鉱油系のグリス、右側はシリコン系のグリスに、それぞれ70℃の温度で7時間浸漬した後のサンプルの写真になります。エチレンプロピレンゴムは鉱油に対して耐性がないため、7時間という短い時間で左写真のようなOリングの状態になってしまいます。膨潤した状態では、ゴムの弾性、硬度に対しての変化が表れているようなことが推測されます。こういった状態ですと、シール性には不具合が発生しているということが予想されますので、あまりよろしい状態ではないと考えます。写真右のOリングに関して、エチレンプロピレンゴムはシリコン系グリスに対しては耐性があるゴム材料になりますので、膨潤、収縮の症状は見受けられません。この状態であれば、シール性は十分に確保されているというような状態だと推測されます。たった7時間という短い時間でも、耐性がないシール対象物ではゴム材料に大きな変化が発生しますので、シール対象物に対して耐性がある材料を選ぶことが非常に重要な選定内容になります。

▶3.材料選定 ⑶材料選定 選定基準:使用温度(高温)

使用温度範囲で高温に対しての選定の資料になります。ゴム材料によって、耐熱酸化を起こさない温度の領域が異なっております。ゴム材料の耐熱性は、ゴム材料の熱老化(劣化)、それと圧縮永久歪(へたり)に影響を与えますので、高温側の使用温度に関して注意が必要になります。

▶3.材料選定 ⑶材料選定 選定基準:使用温度(低温)

使用温度範囲の低温側の選定の資料になります。ゴム材料は低温になると弾性がなくなりますので、反発力がなくなり、シール性が無くなっているというような判断になります。下の表はゴム材料の弾性がない温度の状態から、温度を上げていって何度まで上げたときにゴム材料に弾性が戻ったかテストした試験のデータとなります。ゴム材料によって、弾性が回復する温度は異なるため、低温での使用範囲の確認も高温側と合わせて必要となります。

▶3.材料選定 ⑷材料選定 選定基準:スキマとはみ出し

次は、ゴム材料の選定で硬度に関係する部分になります。ゴム材料の硬度選定につきましては、使用する圧力と取付溝のスキマ寸法の関係によって硬度を決定することになります。スライドの左側の図は、Oリングに圧力がかかり硬度が不足していることから、溝のスキマからOリングがはみ出しているような絵になっております。このはみだしはOリングの破損に繋がりますので、はみ出さないようなゴム硬度のOリングを選定する必要があります。右のグラフで、ゴムの硬度とスキマ、はみ出しについての説明をさせていただきます。グラフの縦軸は、シール対象物、流体の圧力、グラフの横軸は取付溝のスキマ寸法について示しております。グラフの各線の左下側がOリングのスキマに対してのはみ出し現象がない領域、右上側がスキマに対してのはみ出しがある領域とお考えいただければと思います。グラフの中の赤や青等の線に関しては、ゴムの硬度によって圧力とスキマの関係性を示しているグラフ線になっています。グラフの表す数値はゴム材料の種類には関係せず、ゴム材料の硬度のみ関係します。U565、U801というNOKの材料の記号が、ウレタンゴムは、フッ素ゴム、ニトリルゴムと違い、機械的強度が少し強いため、他の硬度のゴムのものと別のグラフとなっております。U565は、ウレタンの90度材、U801はウレタンの94度材のグラフになります。例えば、圧力10MPaがシール対象物にかかっている場合、ゴム硬度70度のOリングですとスキマが0.2mmでもはみ出し現象が発生します。その時に、同じ条件で流体の圧力が10MPaの時、ゴム硬度が80℃のものはこちらですと、スキマが0.2では、はみ出しがない状態となります。ゴムの硬度によってはみ出しの条件が異なるため、こちらのグラフを参考に、はみ出しの有無をご確認いただいてOリングのゴム硬度の選定をしていただければと思います。

▶参考資料

カタログの材料一覧のページになります。Oリングの使用条件を確認していただいて、こちらのページでゴム材料の種類やゴム材料の硬度、使用温度範囲、シール対象物との相性等が記載されているため、こちらからゴム材料の選定をしていただければと思います。この表にないシール対象物との相性等については、ご連絡・ご相談いただけましたら私の方で確認し、回答させていただきます。表に載っていない対象物の際には、ご相談をお願いいたします。

本日のセミナー内容は以上となります。ありがとうございました。

ご活用いただければ幸いです。

 

 

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株式会社サカエ

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伝動・油空圧機器から検査装置まで扱う技術商社。ロボット導入や画像検査装置導入により生産現場の自動化や省力化を実現させるご提案をします。

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