省エネ事例③ 薄膜高断熱材「ファインシュライト」
ファインシュライトは、高断熱フィラーを塗布した塗布型の薄膜高断熱材です。シリカエアロゲルという材料を使った商品になります。エネルギーの削減、高温下での作業による離職者の低減、やけど防止等の安全対策としてご導入いただいた実績がございます。大気中に放熱される熱を抑えることができれば、その分省エネに繋がります。今回は、ファインシュライトについて詳しくご説明します。
1.シリカエアロゲルを使用した独自技術
シリカエアロゲルは、静止空気を上回る断熱性を持っている材料になります。製造段階で特殊な加工をすることでシリカの粒子がストラクチャーを組みます。そして、小さな気泡を作るのがシリカエアロゲルになります。
空気が動ける自由工程は60~70nm。それに対し、シリカエアロゲルの作る気泡は50nmという非常に小さな直径の細孔構造となっています。そのため、空気は滞留によって動きません。つまり、気泡の中の熱が伝わらない構造になっているということです。
通常の現行断熱材としては、発砲ウレタンや発砲スチロール、発砲系のもの、グラスウール、ロックウールといった繊維系吸音材等が使われます。これらの気泡径は50~500μmです。それに対し、高断熱フィラー(シリカエアロゲル)の気泡径は50nmということで、約千倍以上大きさが違います。
非常に断熱性能が高いシリカエアロゲルではありますが、材料としては難点があります。それは、塗料化が非常に難しいということです。通常のシリカは水と親和性がありますが、特殊な加工を施すことで、水に混ざらない・水に浮いてしまう、水と油のような関係になります。塗料化が難しいため、他社様含め、非常に使いづらい材料になります。
その塗料化が難しいシリカエアロゲルを、住友理工は独自の配合と加工技術を用いることで塗料化(水系の塗料)を実現しました。ただ、塗料化したとは言っても、シリカエアロゲルの性能を最大限に活かすために、配合上、シリカの粉を体積の90%以上入れ、5~10%の樹脂(ツナギ)を入れています。そのため、断熱材の膜としてはもろくなっています。膜がもろいということで、ポリエステルの不織布の上に断熱層をコーティングし、基材として剛性を保つようにした商品になります(2022/04/21時点)。
2.ファインシュライトの特徴1
【氷を用いた実験動画】 視聴時間:約1分
左:基材に使用している不織布のみ、右:不織布の上に断熱層を設けたものを120℃のホットプレートの上に氷と一緒に乗せた検証動画になります。
[Stillair]
静止空気の熱伝導率:0.026
[Finesulight]
不織布を除いた断熱層のみの熱伝導率:0.020
ファインシュライトの方が静止空気よりも熱伝導率が低いことが分かります。
3.ファインシュライトの特徴2
熱源を85℃に設定し、サンプルを乗せて表面温度を測定しました。通常、熱伝導率は厚みに反比例するため、直線状に並ばなければなりません。しかし、汎用断熱材は1mmを切ってくると、二字曲線的に悪くなります。1mmを切ったところになると、ほぼ断熱材としての機能を果たしていない、空気層と変わらない状況になります。それに対し、ファインシュライトは50nmということもあり、1mmを切ったところでも直線的に並んでいます。そのため、薄膜、特に1mm以下のところで大きな差が出るという商品になります。
※上記図のファインシュライトの赤い点(3点)ですが、これは3枚重ねた形になります。「薄膜」ということを押しているのですが、逆に厚くできないという欠点があります。そのため、これまで断熱材を使えなかった1mm以下のところで使うことができる断熱材という形でご理解いただければと思います。
4.事例紹介 カーボンニュートラルへの対応
カーボンニュートラルへの対応で、二酸化炭素の排出量を下げなければならないという課題に対して、ファインシュライトを導入した事例になります。
表面温度:100℃弱
貼り付け前の平均温度が80.5℃。ファインシュライト導入後の平均温度が67.5℃。平均で13℃ほど温度を下げることができました(約19%)。また、貼り付け前は炉の温度が80.5℃ということで、炉の前で作業をしている方からは、照り返しの体感温度が非常に下がったということでお喜びいただきました。
この事例からは、下記のメリットを挙げることができます。
・省エネ…
炉のエネルギー削減(3.5%)+工場内エアコン費用削減
・作業環境改善…
高温下での作業改善→退職者減少に繋げる
・やけど防止…
「やけど注意」プレートの撤去、長袖着用義務の解除 等
ファインシュライトに関するセミナー動画もございますので、(サカエオンラインセミナー「断熱素材による省エネ・作業環境改善」)お時間のある方はそちらもご視聴いただけますとより理解が深まるかと思います。ご活用いただけますと幸いです。